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コラム ー事由自在ー

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疲れ果てる勤務医の実態
DATE: 2008.10.1
医療の最前線に立つ勤務医が疲れ果てている。
現場からは医師不足による医師への過度な負担が、医療行為の「質」に影響を与えるのは必至で、医療崩壊につながるとの懸念は絶えない。

厚生労働省によると、日本の医師数は推計25万7000人(平成16年)。内訳は病院の勤務医が16万4000人、開業医(診療所勤務の医師を含む)が9万3000人となっている。
WHO世界保健機関が平成18年に発表した報告書では、人口10万人当たりの日本の医師数は198人。これに対しフランス337人、イタリア420人、スペイン330人、ロシア425人など。
日本の大学医学部の入学定員は約7500人で、現役引退等の医師を差し引くと、毎年約4000人の増加にすぎない。

医師不足顕在化の背景には、国が長年にわたり医療費抑制策を推進してきたことがある。
しかも06年に始まった医師免許取得後2年間の臨床研修必修化に伴い、若い研修医が都会の病院に集中。大学病院の医師確保が難しくなり、大学から各地の中核病院に派遣されていた医師の引き揚げが相次ぎ、医師の「偏在」という新たな問題も生まれた。

厚労省によると、病院常勤医の勤務時間は、労働基準法による法定労働時間(40時間)を大幅に上回る週平均70・6時間。社団法人日本病院会が実施したアンケートでも、宿直を除く一週間の勤務時間は「44時間以上」が83・4%で、「40時間未満」は4・1%にとどまった。また1カ月の宿直回数も「3〜5回以上」が57・9%に達した。
一方、厚労省が昨年10月に公表した医療経済実態調査によると、勤務医の平均月収は国公立病院などが102〜119万円で、民間病院は134万円。これに対し開業医は211万円と、勤務医の平均月収の約1.6倍も高かった。

こうした現状を踏まえ、国は今年度の診療報酬改定で、医師不足が深刻な病院診療科に対し、計1500億円の重点配分を決めた。
大学病院を管理する「文部科学省」、新臨床研修制度を提案した「厚生労働省」、公立病院を管理する「総務省」。横を見ないこの縦割り行政が与えたものは大きい。
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進行性の肝細胞がん 分子標的薬に期待するもの
DATE: 2008.9.1
 国内で4番目に多いがんであり、進行性となると極めて治療の難しい肝細胞がん。早期に検出し、外科的手術を受けても、およそ50%の方が3年以内に再発する。
術後の再発予防を目的として、アジュバンド(術後補助)療法の有効性・評価を検証する動きも予定されるなか、がん対策における分子標的薬の役割に期待したい。

 日本の肝がん治療の特徴は、肝細胞がんの早期検出率が60% と世界一。欧米の約30% に比べると、多くの方が治癒的治療の対象となっている。日本では、欧州と違って生体肝移植以外の肝移植は行われておらず、切除・エタノール注入・ラジオ波といった局所療法が中心に行われるが、病期の分類による治療のなかで化学塞栓術を行えない場合は、ほかに治療法はなかった。

 2007年のASCO(米国臨床腫瘍学会)で、腎細胞癌で治療効果が確認されている「ソラフェニブ」がプラセボと比較して、全生存期間を44% 延長したことを示す「SHARP」試験の結果が発表された。
この分子標的薬は、欧米で適用拡大が承認、進行性肝細胞がんに対する第一選択薬となった。
副作用は、下痢が全体の40% 疲労が30% 手足症候群が20% といったマイナーな副作用があるものの、おおむね管理可能という。
 
 従来の抗がん剤は、強い副作用があり、患者のQOLを落とすことが問題視されてきた。
分子標的薬によって、がんの成長を抑制し、がんは残ってもQOLを保ちながら生存期間を延ばすという、新しい治療概念が生まれつつある。
完全に治癒することが難しくとも、進行性のまま放って置かれた方に、希望のともしびになることを願う。
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治験離れの問題と大学病院の取り組み
DATE: 2008.8.4
新しい薬や医療機器を開発するための治験。医療の未来を切り開き、患者には苦しみを和らげる希望となりうるが、国内では「治験の空洞化」も課題となっている。

「九州大学病院高度先端医療センター」が開設されて5年。医師や医療、研究機関として治験に積極的に取組み着実に実績を上げつつ体制の強化も求められている。
同センターは2003年に開設された、同病院での治験に関する総合的かつ専門的な部門。治験に関心を持つ患者には、内容や目的、想定される副作用などを説明し納得のうえ、参加の同意を得る。
また、実際に治験を行う医師と患者の意思疎通を潤滑にするために看護師やCRCがサポートしている。

欧米と比べ、日本の治験は時間がかかり費用も高いため、国内では以前から「治験離れ」が問題となっていた。そのうえ、欧米で行った治験データを厚生労働省への承認申請に使えるようになり、国内での治験の空洞化は加速した。
厚生労働省などは2003年以降、治験の活性化計画を定めるなどの対策に乗り出している。
そんな現状の中、同センターが今年3月末までで手がけた治験は612件、協力患者数は7529人に上る。

一方で、センターに携わり、治験のノウハウを養った人達が数年で移動を余儀なくされるなど、センターが大学病院という組織の一部門であるための課題も浮上している。
「未知の領域」の開拓には、高度な専門性を持つ人や患者、製薬企業とじかに接するスタッフが長期間、継続して取組むことが不可欠となる。
センターの活動を支える体制の充実を望みたい。
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勤務医師の労働環境改善を !
DATE: 2008.7.7
医師不足を解消するための厚生労働省の「安心と希望の医療確保ビジョン」がまとまった。
これまでの医師養成数の抑制方針を180度転換し、医師の増員を打ち出す内容である。しかし、医師不足は単純に全体的な人数を増やせば、解決する問題ではない。

現在、不足しているのは勤務医であり、増やした医師がビル診などの開業医に流れるようでは意味がない。大学医学部の定員数を増やしても実際に医師が増えるには10年はかかり、当面の医師不足にはほとんど効き目がないからである。
拘束時間が長く、医療事故の訴訟が多いなどその勤務の過酷さから敬遠されがちな産婦人科や小児科、麻酔科、救急医療などの病院勤務医の労働環境を改善して重点的に支援する必要があるのではないか。

そのためには産科や小児科に多い女性医師を積極的に活用したい。
結婚や出産で病院を辞めることが多い女性医師に、民間企業と同じように短時間労働制度を適用し夜勤や泊まり勤務をなくす。病院内に保育所を設けるのも有効な手段だろう。
次に診療報酬を手厚く配分して勤務医の収入を引き上げる。医師を補助する医療クラーク制度を充実させたり、看護師や助産師らの資質を向上させたりして医師の仕事量を少しでも軽減することも大切である。

医師は、国民の健康を支える公共性の強い存在であるのだから。
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外国人労働者の労働条件 認識のズレ
DATE: 2008.6.2
先月20日、日本とインドネシアの経済連携協定(EPA)に基づき、医療や福祉分野で本格的に外国人労働者を受け入れることが決定した。
これによりインドネシア人の看護師と介護士が、7月下旬から8月上旬に来日することが正式決定する中、労働条件などの待遇を巡って、両国間で認識の開きがあり課題山積のスタートとなった。

同協定で受け入れる人数は2年間で計1000人。インドネシアには、日本人向けの介護士養成の研修コースがないため、今年度に限っては看護師資格を持つ人が看護師、介護士コースに分かれて来日する。
インドネシアでは年間約3万人が看護師学校を卒業するが、その3割しか看護師として就職出来ていないことと、過酷な労働条件で離職者が多く、介護施設の人手不足に悩む日本の思惑が一致した構図となっている。

だが待遇を巡り両国の認識の違いは大きい。
インドネシアは、「看護師で月額20万円以上、介護士で17万5000円以上」という希望額を示しており、日本は看護師として勤務する上では、日本の国家試験に合格する必要性を求めている。
また受け入れ施設では、看護師や介護士の必要数を定めた「配置基準」に算入できず、なお給与とは別に斡旋手数料の支払いを負担する必要があることから、メリットが少なく、その対応に応えられるかは不透明さを露呈する。

医療や福祉の分野では、従来よりマンパワーが不足している現実の中で、いかに人材を長期的に確保するかが重大な課題のひとつとなっている。
外国人労働者の労働力の傾注と並行して、国内での雇用増大につなげるためにも、現場レベルでの声を反映したシステム作りや、なにより国の医療福祉への予算配分の強化が求められる。
有資格者が能力を生かして働ける環境づくりには、まだまだ高いハードルが待ち受けているのである。
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